
大都会新宿、世界最大の繁華街として長い歴史を刻む街型モンスター。多くの人が新宿に集まり、更なる発展を繰り返す。そんな大都会新宿から2駅電車に揺られると代田橋という不思議なエリアがある。その不思議さは新宿の隣の隣とは思えぬほどの長閑さにあった。最近、巷でよく耳にするレストラン「都会の森ガーデン」もその代田橋にあった。「都会の森ガーデン」はテーマ型のレストランでありアート空間だという。そこを訪れた者は高い確率でリピーターとなり、敷地内に日本一花を咲かすといわれる桜があることから、春先の予約は2年先までギッシリ、とはいえ桜だけが人々を集めているわけでなく、どうやら「都会の森ガーデン」ディレクター筒井はじめの存在も人々を集める理由の1つである。
さて、筒井はじめとは一体どのような人物なのか?絵描きとしても知られる存在になった筒井はじめ。彼に興味を持つ業界人は数多く、しかし、メディア嫌いと噂される彼は、フワフワと揺れながら現れた。その外見は、予想していたものと全く異なった。予想していた筒井はじめはギラギラしていたが、実際の筒井はじめは「えっ?」と言葉をこぼしてしまうほどに好青年の印象を焼き付けてくれた。
--「はじめまして。」
筒井「どうも。あれ?何か顔についてますか?」
--「いえ、予想していた筒井さんとあまりにも
違う感じなんで(笑)」
筒井「ふふ、どんな予想していたんですか?」
--「なんというか。。。いやぁ、さわやかですよね本当に。」
筒井「外見だけですよ、ふふ。
中身は人間ドロドロベロベロバーですよ(笑)」
--「ドロドロって、これまた表現がスゴイというか。。。
もう少し、中身について語っていただけますか?」
筒井「中身ねぇ・・・。臆病者かなぁ僕は。
死について考えない日はないかもしれない。」
--「それはどうしてですか?」
筒井「死にたくないからですよ。ふとした瞬間に
死に見つめられている気がして、辺りをキョロキョロするんですけど、
結局、死は見当たらない。それで、ほっとした瞬間、自分は
もう死んでいるんじゃないか?そう思えて鏡の前に立つんです。
そして、鏡に写る自分を見て安心する。そんな感じかな。」
--「いきなりディープな展開です。驚きが隠せませんが、何故、そんな風なんでしょうか?」
筒井「3年前に母が死んじゃって、それからなんで、母の死が消化できてないのかなぁ。正直、今でもすごく悲しい気持ちに襲われて、独りベットで眠る。目が覚めると無性に母に会いたくて、何がなんだかわからなくなる。」
--「あのぉ、大変申し訳ありませんが、話を少し「都会の森ガーデン」の方にシフトしてもよろしいですか(笑)」
筒井「そうだ、そうだ。ごめんなさい。都会の森についてインタビューでしたね。失礼しました。じゃぁ、最後にこの場を借りて一言だけ母にメッセージしていいですか?」
--「えっ?お母さんですか?」
筒井「ママちゃん、俺、真面目にやってるよ!見てる?」
--「。。。。。」


筒井「都会の森ガーデン。それは友達との新しい付き合い方がそこらじゅうにある芸術。友達との新しい付き合い方は少し時が過ぎると新しい自分発見に変わる。この現象も芸術の範疇と考えると自然と人類の心をディストリビュートした生物融合の機能性を具現化した画期的な作品かもしれない。実際のところ、想像する力のほとんどを客人の心を意識しちゃった感じです。」
--「都会の森ガーデンに行くことで最終的に新しい自分に出会えるってことですか?」
筒井「いや、それだとちょっとエロい気がします。もう少し解説すると、都会の森ガーデンにテーブルを39作りました。最初は68テーブルあったのですが、どうも隣が近い。それだと集中できないので29テーブル減らしました。」
--「集中?それは何に集中するんですか?」
筒井「友達の様子に集中する、それと木々や草木と風が奏でる音楽です。この2つに集中できる環境設定はとても大切にしました。」
--「木と草と風の音楽いいですね!」
筒井「まぁ、録音して家で聞くと少しホラーミュージックなんで家では聞かないことにしたのですが、自然の中で聞くと心がユラユラしてくるんです。風が演奏してるというよりは、風は音を出す道具であり、その道具を使って演奏する者の正体は地球だった!みたいな感じですかね。」
--「地球が演奏しているって聞いてみたいなぁ。」
筒井「恐らく、地球の表面は天文学的な単位で音を出していて、でも、その現象は人間の皮膚表皮でも起きているのではないか?しかし、僕らの耳ではそれを認識できない。皮膚は確実に皮下組織から真皮に変化する音も出していて、真皮が表皮に変化する音も出しているが、後者のほうが音が大きい。それを本気で確認しようと思うと、友達に当初とは違う意味で集中する。これが意外と温かい気持ちにつながって、先日、路上に10万円寄付しましたよ。」
--「路上寺ですか?10万円寄付ってすごいですね。」
筒井「路上寺ではなく、そこらにある普通の路上です。誰かが拾う、いや、むしろ道を歩いていたら道の先から
1万円が風に乗って低空飛行で足元に飛んできた!うわぁーやった!俺って超ラッキー!!そんな風になることを祈って、というか実は、前にそういう体験をしたんです。あの日、僕は酷く疲れて独りで井の頭通りを歩いていたんです。やがて環七が見えてくるんだけど環七までは行かず、1つ前の信号を左折した瞬間、遠くから何の迷いもなく風に乗った1万円札が僕のところに飛んできたんです。」
--「ほうほう、それでそれで・・」
筒井「はい、気が付いてから手にするまでの時間が微妙に長くて、
不安と心配が入り混じった心模様がどんどん派手になっていく感じ
なんだけど、ある一方では興奮の波は高まるばかりで、気が付け
ば酷かった疲れなんて少しも残ってなくて、笑顔笑顔で1万円を手
にした。あの時の、突然始まった究極の興奮は感覚的で絶対に
忘れたくない。そんな感覚だからこそ自分以外の人にも優しく
なれて、1飛べ2舞え3取れ、こんな感じで誰かに届くと素敵だ
なっておもっています。」
--「筒井さん、正直に言ってしまうと、
話の意味がわかりません(笑)」
筒井「1万円拾ったら誰だって嬉しいじゃない。
1万円の方から来てくれる状態の興奮は、これまた特別なもの
なんで、それを他人様にも体験していただこうということで路上に
お金を置いてみるんです。」
--「なるほどなるほど。。。ところでそれと都会の森はどう
関係があるんでしたっけ?」
筒井「うん、ちょっとわかりませんが、恐らく、寄付云々を思いついたのは
友達と都会の森で過ごしたから、そんな感じだったように思います。」
--「そうかも、そうかも。ところで都会の森ガーデンには国内外数多くの有名人が来店されているようですが、外タレではどんな方がいらっしゃいましたか?」
筒井「うーん、それはちょっと答えたくないなぁ。。。外タレもお忍びなんで、そっとしておいてあげてください。
しいていうなら宇宙人と戦う人が意外な日本人女優と来ました。えぇぇぇ!マジ!!!みたいな組み合わせで、テントの中でいい空気になっている姿を見て、この世の人と人のつながりはエロチックなほど刺激的なのかもしれない、そこである日、都会の森ガーデンに全裸の女性を解き放ったんです。妖精の様にフワフワと飛び跳ねたり、そっとお客のテーブルに近づいて驚かせたり、注文をとってあげたり、色々してみたんです。結構、ウケていたんですけどね、不快に思ったお客さんが警察を呼んでしまったんです。」


--「それまた激しい。それでどうなりました?」
筒井「すぐ止めさせるように言われ、万が一、敷地を出たら逮捕します。って言われました。」
--「敷地内だったらいいんですか?」
筒井「どうなんでしょうか?続き、話していいですか?」
--「はい、おねがいします。」
筒井「そんなこんなで警察官に注意をされている最中に、女の子が目で合図してくるんです。」
--「合図、どんな?」
筒井「次の瞬間、もう女の子は敷地を飛び出してフワフワしちゃったんです。警察官は急にスイッチオンして激怒してましたが、女の子は笑ってどんどん遠くにいってしまったんです。結局、女の子は帰ってきませんでした。」
--「捕まった?」
筒井「いや、警察官は女の子を取り逃がしました(笑)」
--「走って逃げた感じですか?」
筒井「よく覚えてないんですよね速度的なことを。記録ノートを見れば書いてあると思います。後で調べてお知らせしましょうか?」
--「はい、是非お願いします。気になるなぁ。。。ところで記録ノートって何です?」
筒井「子供の頃からの癖で日記が止められないんです。毎日じゃないですよ。心に響いた日常の記録をしているというのか、人やモノとの新しい遭遇や分析をメモメモしているだけです。」
--「マメですね。では最後に都会の森ガーデンの将来の展望について軽く教えてください。」
筒井「4年以内にはここを破壊します。」
--「えぇぇぇぇぇ・・・・あっ、冗談ですよね!」
筒井「本当ですよ。早ければあと2年かな。。。完成したらクローズすると最初から決めていたんで。」
--「勿体無い、色々な意味で勿体無い気がします。だって儲かってるでしょ?」
筒井「勿体無いという気持ちもわかるんですけどね。都会の森ガーデンは何もかもが大きすぎて終わらせないと次にいけないんです。だから、都会の森ガーデンである作品を作っているんですけどね、それが完成したら次の世界にいくために終わりにするんです。」
--「次の世界ですか?」
筒井「はい。そうです。」
--「それはどんな世界ですか?」
筒井「都会の森ガーデンよりも愛を強く表現できる世界に行きたい。」
--「あてはあるんですか?」
筒井「ありません。」
--「筒井さんは活動的ですよね!目が離せない!」
筒井「ありがとうございまりもりもり。」
--「えっ(笑)それでは筒井さん、最後に1つ質問させてください!
先ほどお話に出てきました今、都会の森ガーデンで制作されて
いて、完成したら都会の森ガーデンをやめてしまうと決めている
作品は一体どんな作品なんでしょうか!?」
筒井「はい。都会の森ガーデンです。」
--「都会の森ガーデン?」
筒井「はい。そうです。」
--「本日はありがとうございました。」
筒井「こちらこそ、ありがとうございました。」

2003.9.4 ◎kobayasisigetaka.com